会社勤めをしながらフリーランスに憧れることは誰にでもあるでしょう。しかし憧れだけで独立するのは危険です。もちろん会社を辞めて開業届けを税務署に提出すれば、その日からフリーランスという身分を手にすることは可能ですが、その反面、会社勤めでは当然の生活保障や福利厚生を受けられないという、冷厳たる事実を自覚しておかなければならないのです。
フリーランスになれば、当然のことですが、自分が受注して納品したモノに対して、クライアントから適正に報酬などを受領して、初めて自分の収入になります。まして開業したてで実績の乏しいフリーランスにとって、営業は思いの外大変であり、いつ受注できるものか分かりません。経済情勢にも大きく左右され、継続的に良好な関係を維持できるクライアントを探すのは、難しいものです。またある程度の規模の仕事になれば、数ヶ月を要することにもなるでしょうが、前払いや分割払いの契約をしていない限り、最後に一括して報酬を受け取るまで収入にはなりません。従ってフリーランスとして最低限生活費6か月分と相応な事業資金を、常に確保しておく必要があります。もちろんフリーランスも国民健康保険に加入していますが、サラリーマンの社会保険と異なり、突発的な怪我や病気になっても、生活保障はありません。そして年金も国民年金だけでは老後の生活費を賄うのにはとても足りないのが現状です。また当然のことながら、事業主として税金を納めなければなりません。もちろんそれだけの収入があることが前提にはなりますが、収入の半分は税金等で支払うものと覚悟して、あらかじめ納税や保険料納入のために貯蓄しておく必要があります。そのため開業と同時に事業用口座を開設する他に、納税用、そして緊急用の口座を分けて、それぞれに積立をしている人も少なくありません。
フリーランスになると先々の不安が先に立ち、つい目先の仕事を優先しがちです。しかしそれでは思うようなキャリアを築くことが出来ない上に、値下げ競争に巻き込まれて疲弊してしまいます。仕事選びの基準を明確にして、自分のキャリアにとって有益であれば収入は度外視してでも受注する、といった姿勢も大切です。またフリーランスにとって人脈が大切というのは当然ですが、営業が不得手なエンジニアなども少なくありません。しかし自らを知り自らを売り込むことで、クライアントとの信頼関係を築くと考えれば、クライアントが何を求めているのか、それに対して自分が何を提供できるのかということを、プラス面だけではなくマイナス面も含めて分かりやすく説明できなければなりませんし、また仮説を立ててクライアントの問題を自ら一緒に解決しようという積極性が必要です。
フリーランスは多くの場合、孤独です。忙しくても、暇でも、孤独感におそわれる場面があります。フリーランス同士、横のつながりを持つなどして、心の支えとなる環境を自らつくるようにすると良いでしょう。また、自分ひとりで仕事をすることになるため、モチベーションを上げるために日常できる工夫がないか、考えておく必要があるでしょう。他人の目がなくても自分を律することができるよう、自己管理の習慣をつけておきましょう。